我々には拘りのトロフィーがある。

ゴルフ好きが集まって、年に二回ゴルフコンペをやろうということになってもう10年になる。数回は会社のイニシャルを取って「TMSマスターズ」いう名前で行った。メンバーは当初30名で、ゴルフ場を取るのも大変だった。最初はみんなが集まって楽しいゴルフコンペという感じだったが、コンペの後の飲み会でトロフィーを作ってみんなで競い合おうという意見が出た。酒の力も加わってその意見にみんなが賛同した。


そして、そのコンペの名前を「No.1」とした。ゴルフをこよなく愛する仲間たちの中の「No.1」である。トロフィーには「No.1」という文字を彫り、大会ごとの優勝者をリボンに記入してトロフィーに重ねていくことにした。その時に年に二回にすることも決めた。そして第一回目の「No.1」は水戸のゴルフ場で開催した。問題は、若い連中はなるべく安くできることが第一の希望でゴルフ場を探すのが大変だった。距離が遠くても費用を少なく抑えるように4人毎のチームをつくり、一台の車に便乗して来るといった暗黙の決まりもできた。第一回目は優勝者は88で決まった。2位が89、3位が90とそれこそ我々の間では語り草になる名勝負になった。


そして二回目の勝者は83、三回目の勝者は86という内容で続いていくかのように思えた。そんな時に事件が起こった。会社の業績が悪くなり、会社を二分することになったのだ。我々の会社はある大手電機メーカーの子会社だったのだが、AV関係の部署とドキュメント関係の部署が分かれて別々の会社になることになった。別々の会社といっても親会社の関連部署とくっつく形だ。このため第四回目のコンペからは人数が20名となった。仕事の関係で地方に転勤となった人間が参加できなくなったためだ。しかし、四回面のコンペは面白かった。最終ラウンドまで同じ組みの二人が競った。私は別の組みだったので状況はわからなかったが、一緒に回った人間に聞いたところ、それこそ最終3ホールは緊張の連続で二人とも一歩も譲らない大接戦だったらしい。最終ホールでひとりが2オンを狙い決着をつけようとしたのだが、打った球はグリーンを一旦は捉えたものの転がってオーバーしたのだ。そのボールが池に落ちてしまった。これで勝有り、結局勝者が82、池に落とした人間が84で二位だった。その週の反省会と称する飲み会でこの話題に花が咲いた。勝った人間も、負けた人間も、その争いに参加できなかった人間も、次回のコンペに夢を託した。トロフィーを競い合うという他愛のない遊びが、こんなにみんなに火をつけるとは何とも楽しいことだ。